よくあるご質問 酒茶論
上野伸弘のコラム
第三回 森本仙右衛門商店(三重)
古酒というと風格や秘蔵など重みのある言葉を思い浮かべる方が多いと思われるが、「十年者」、「玄米ワイン」等チョット人をくった様なネーミングのお酒を配する蔵が三重県にある。それもそのはず、忍びの里伊賀上野の酒蔵である。伊賀者、甲賀者とは耳にするが十年者とは忍者の里らしきネーミングだ。

また、この地は松尾芭蕉の生誕の地でもあり芭蕉にちなんだ名所や忍者資料館、城下町ならではの見所満載の観光地でもある。4月から5月にかけて忍者フェスタといってこの町は忍者一色となる。市役所や観光に携わる人達を筆頭に皆忍者の姿で町を行き来する。勿論観光に来たお客様方も忍者変身所で気軽に衣装がレンタルできる。

忍者列車

伊賀 上野城
そしてその町へ向かう列車は「伊賀神戸」より「伊賀上野」までなんと松本零士さんのイラスト入り忍者列車に揺られての楽しい旅である。余談になるが以前、鳥取県の米子から境港に向かう列車は「ゲゲゲの鬼太郎列車」でした。JR西日本に感謝!心が和みます。そんなユーモア溢れる町でユーモア溢れる酒が造られるのだ。

酒茶論に森本さんが初めて持ってきた酒は玄米ワイン(23年物)でした、その時「よく23年もの長い間寝かせておきましたね」との言葉に「いえいえ、ここ数年でようやく面白い味になってきたんですよ」とさらりと答えた森本さん、本当なのかとの思いも蔵を訪ねて納得した。
私を待ち構えていたお酒は製品にまだなっていないお酒のオンパレード、一緒に利き酒をしながら森本さんの口から毀れる言葉は「う〜ん!まだやナ〜!」「コレモまだ納得いかないんで、も少し寝かせてみようかな〜」「コレモまだまだやナ〜」とののんびりした口調は、出荷の時を待つお酒に「もう少し待っていろよ!お前が一番いい状態で製品にしてやるからな」と語りかけているように私には聞こえた。
森本仙右衛門商店

八代目蔵元 森本 高史氏
そんな森本さんの人柄が表れるエピソードをもう2つほどお伝えしたい。ある日「酒茶論」を訪れた森本さん、カウンター越しに今後の古酒について語る私の話に真剣に聞き入っていたのですが、突然呆けた顔で「あっ!行っちゃた」「えっ!」「最終の新幹線行っちゃいました」「帰る予定だったのですか?」「はい〜」「なんで途中言ってくれなかったのですか?」「え〜大事そうな話だったものですから〜」「帰れないじゃないですか」「そうですね」
またある日、十年者のサンプルを持ってこられて、「この酒変なんですよ〜」「どうしたんですか」「十年たったら+の酒が−にメーターが大きく変わっちゃったんです」「そんなことあるのですか?」「あるわけ無いけど計ってみたらそうなっちゃたんです」「どこかで帳簿間違えでもあったのでしょうか?」「そうかもしれないけど今は今なんでしょうがないですね!」製品となったそのお酒のラベルには出来た時の成分と出荷時の成分の違いがしっかりと記されていました。

この方どこまでが真剣でどこまでが遊び心なのか、とぼけた口調からは時折窺い知れないこともあるが、お酒は和みの源、忍者のように煙に巻く話術で愉快に飲もうね森本さん。
森本仙右衛門商店のプロフィールと取扱商品