上野伸弘のコラム

第五話 復活した古酒、熟成酒造り、実は意外な理由から

蔵元は経験則として春先に搾る酒が、夏を越し熟成された秋口においしい酒となることは誰しも知るところである。しかし、5年、10年、と長きに渡る熟成は文献では知るものの、あえてチャレンジするものではなかったようだ。そのような中で、戦後、技術の研鑽のために造られて来た酒「清酒品評会用」はコストも高く、もともと売り物ではない研究用に造られていたものだ。それらは静かに蔵で寝かされていた。(現在の種類鑑評会用の酒は売り物として大変人気の高い物になっているが、当時の吟醸タイプのお酒は売り物にはならなかった。)また、日本酒は本来再現性を重んじる商品である。思ったとおりの酒質に上がらず商品として出荷するに至らないお酒をブレンド用として寝かされたていたものがあり、後年試しに飲んでみると大変豊かな味わいと香りを醸し出していたという。つまり、最初は偶然からの再スタートなのである。
しかし、それも1985年(昭和60年)に「長期熟成酒研究会」(現在、加盟酒造会社50社)の発足によって、個々のノウハウから情報の共有が行われることとなった。要は偶然の酒から目的を持った酒へと変わってきたのである。