上野伸弘のコラム第三話 最近何かと耳にする「古酒」、実は日本酒のこと
まず、「古酒」と聞き日本酒を思い浮かべる方がどれだけいるだろうか。昨今の焼酎ブームにより沖縄の泡盛の古酒にはじまり、本格焼酎と呼ばれる乙類焼酎にも広がり、現在ではその存在が尊ばれる環境にあり、「古酒」とういと焼酎を思い浮かべるという方が増えてきた。
しかし、実は日本酒の古酒もその歴史は古く、各種文献からその存在を知ることができる。鎌倉時代の古文書には「人の血を絞れる女人の成仏徳道疑うべしや(ひとの血を絞るが如き古酒を贈ったあなたの成仏、道徳を疑う事は無い)」と記されている。これは、日蓮上人が女性信者から送られた古酒への礼状と、いわれている。また、江戸時代に書かれた食物図鑑「本朝食艦」にも「三、四、五年の酒、味わい濃く、香り美しく最も佳なり。六、七年から十年になるもの味薄く、気は厚め、色も深濃で、異香あれて尚佳なり」と古酒について述べられている。当時は、醸造技術や保管技術の未熟な時代であり、そこで飲まれていた古酒は大変貴重な物として高貴な人々でしか楽しむことができなかったようだ。憶測ではあるが、日本酒の古酒は少なくとも焼酎よりも遥か昔に存在していたと思われ、古くは鎌倉、室町、江戸と渡り、琥珀色や山吹色の古酒が造られていた。このことから「古酒」とは、実は日本酒をさしていると言えよう。
ここからは、「古酒」=日本酒の古酒と位置づけ、様々なお話を進めてまいります。 日本酒における「古酒」の定義とは酒類業界では醸造年度というものを設けていて、酒造りの1年は7月1日〜6月30日までをいい、そしてその間にできた酒が次の醸造年度を越えたとき、その酒を古酒と呼ぶ。となれば、昨今人気の「冷おろし」や「秋あがり」などの秋口に出されるお酒はすべて古酒ということになる。また、2年以上寝かせたお酒を「古古酒」と呼び、3年以上寝かせると「大古酒」、5年以上のものを「秘蔵酒」と呼んでいる。 2005 フードリサーチ掲載記事より抜粋 |







