上野伸弘のコラム第二話 現存する「日本最古の酒」大沢酒造の古伊万里
先ず持って記しておきたい蔵とは、長野県東部に位置する佐久郡の大澤酒造である。残念ながら現在皆様方にご案内できる古酒はありません、ではなぜこの蔵のお話をさせていただくかというと、「日本最古の酒」(現存する飲めたお酒)がこの蔵の資料館に展示してあるからである。
![]() 大沢酒造
私共が日々「酒茶論」を通じてお客様にメニューの説明をさせていただく折、よくお客様の口から毀れる言葉は、古いお酒って美味しいの?日本酒は古くなると酢になるんじゃないの?との質問です。
![]() 大沢酒造の300年の時を経た古酒
その昔の日本酒は水で割ったが為アルコール度数が低かったり、保存容器に恵まれないが故に密閉度が低く、空気中に存在する酢酸菌がお酒の中に飛び込み酢酸発酵の後お酢になってしまった事があったことは事実です。しかし現在の皆様にお届けしている生酒以外のお酒は技術面、衛生面からそのような雑菌に犯されることは無くといって良いほど無く、殺菌済みの密閉された容器の中で酢酸菌は繁殖することもありませんから酢にはなりません。
昔の酸敗してしまったお酒の話と実際に日本酒やワインを酢酸発酵させると米酢やワインビネガーが出来る事実から俗説的に酒は古くなると酢になるといわれているだけである。
そこで実際古い酒が飲めるのか?という質問の答えとして300年の時を経たお酒のお話をさせていただこうと思います。
この大澤酒造さんは1689年「元禄弐年」の創業だそうで、その二代目が創業時に造った酒を白磁の古伊万里の壷に詰め代々開封することなく伝えてきました。 そしてこの酒は昭和43年酒業界の重鎮である故坂口謹一郎先生の立会いの下開封されました。その時の様子を先生は「・・・振ってみると底の方で重たい液体のうごく音が聞こえる。開栓して猪口に注ぐと、ドロドロの褐色の液体が出てきた。そのとたんに、狭いわが家の応接間は、ふくいくたる芳香に満たされたのである。その香りは、あたかも昔スペインのシェリー工場で見せられた百年ものと称するシェリーそっくりであった。」と記しています。 ![]() 80年物の純米酒
また、これは大澤酒造の物ではありませんが昨年6月、都内ホテルの宴会場で昭和元年産と称される80年物の純米酒を報道関係者みまもるなかで3本開封しその各々のコンディションは違う物の一様にその豊かな香りと豊潤な味わいを大勢で堪能した事は記憶に新しい事実である。またこのお酒は「酒茶論」にも展示してあるので興味のある方は是非見に来ていただきたい。
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