上野伸弘のコラム

第十話 古酒の飲み頃

熟成工程を長い間積み重ねてきた酒はその経緯から飲み頃を熟知する人も多いようだ。しかし、古酒は復古酒であるため、これから各々の酒の飲み頃を探っていく必要がある。

現在市販されている古酒ではおおよそ40年を迎えるものが最古であると思われる。
しかし、古いビンテージ物ほど良いといった曖味な雰囲気が存在する。
日本酒といえども様々なタイプの造り方があり醸造過程によって、飲み頃は30年かもしれないし、50年か、100年かもしれない。しかし、『飲み頃』は必ずや存在するはずである。酒造会社や販売店は消費者に間違った価値観を植えることなく、 酒の飲み頃を的確に判断し伝えていくこともこれからは大変重要になると思われる。

これまでは、全国の酒造会社にある古酒について語ってきたが、ここで、このコラムを読んでくれている熟生に紹介したい日本酒がある。それは日本酒の「自家熟成酒」。
少々話はそれるが、中国には女児酒といって女子が生まれると甕の紹興酒を求め、 その女子が嫁ぐ時にその酒を持たせる慣わしがあることをご存知であろうか?
日本酒が熟成を重ねることによって、その味わいが深まることが周知の事となれば、 日本酒を自家熟成させる慣わしが日本でも根付くだろう。これは子供が生まれたときに その日の新聞と、その年の出来た日本酒を取り置き、子供の成人の折にその酒を酌み交わすということである。親子、孫子で当人の生まれた日の新聞を見て、成長を振り返る。
大変良ききっかけ作りにもなる。そして、それは何も子供の誕生だけではなく、 全てのアニバーサリー(卒業記念、結婚記念など)に自家熟成酒を買い、10、20年後に楽しむ。そのような人の結びつきや思い出を託せるものに育て上げて行きたいものだ。